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ソフトウェアシンセサイザーは実際どれくらい重いのか?

ソフトウェアシンセサイザーは実際どれくらい重いのか?

はじめに

VSTi や Audio Unit などといったプラグインとして動作するソフトウェアシンセは、実際どれほど多くのリソースを消費するのだろうか。楽曲を作りながら何個もプラグインをロードしていくと、知らない間に DAW 自体がかなりのメモリを消費していることに気づいたことのある読者も少なくないだろう。

筆者は曲を作ることを趣味の第一としているのにもかかわらず、曲のアイデアより先に思いついたことはまず先に実行してしまうきらいがあって、その一つが今回の実験だった。今回は、ソフトウェアシンセサイザーを中心にそれらのリソース消費量について検証していく。

注意(追記)

記事執筆当時は、 Surge は非 XT 版と XT 版の2つがリリースされていましたが、2023 月 10 月現在は XT 版のみとなっていることに注意してください。また、DAW のバージョンは記録していたものの、シンセサイザーのバージョンを控えるのを完全に忘れています。したがって、検証結果は参考程度にしていただければよいと思います。

環境

筆者が普段使用しているDAWは FL Studio 20.9 で、今回の実験も同様の環境で行った。

検証に使用したシンセサイザーは以下の7つで、プラグイン1つ1つの紹介は避けるが、Serum, Massive を除くすべては全て無料でダウンロードできるシンセサイザーである。また、Surge に関しては Classic、 Wavetable 、FM など複数のオシレーターのアルゴリズムが存在するが、今回の実験では Modern Oscilator モードを使用した。

  • Synth1
  • Serum
  • Surge の Modern Oscilator モード
  • Surge XT の Modern Oscilator モード
  • Vital
  • Massive
  • Xhip
Surge XT の Modern Oscilator モード

評価方法

評価は以下の要領で行った。

  1. 一つのシンセを同じプロジェクト内で1台ずつ起動していき、最大5台まで起動していったときに、1台ずつ増加するであろうメモリ使用量の平均値を計算する。
  2. それぞれのシンセの種類分新規のプロジェクトを立ち上げて、同じように手順1を繰り返し、平均メモリ使用量を計算する。

結果と分析

以下に、計測した生のデータと、それから算出した差分を示す。

メモリ消費量(生データ)

以下のグラフは、縦軸をメモリ消費量、横軸をプラグインを立ち上げた台数にとったグラフである。以下のグラフにおける横軸の、原点ががシンセを読み込んでいない状態である。並ぶ1列目がまず1台目のシンセを起動した状態のメモリ消費量で、どのシンセも多かれ少なかれメモリを消費しているようだ。一番メモリ消費量が少ないのはSynth1で、その次が Xhip、Surge XT、Surge、Massive、Serum、そして Vital と後続していく形になっている。台数を増やしていくと、おおむね起動台数に比例してメモリ消費量が増えていくことが明らかとなった。

メモリ消費量(生データ)

メモリ消費量 (増減量)

上のデータに基づいて、シンセを立ち上げるごとにメモリ使用量がどれくらい増減するのかを算出した。グラフが平らになっていればいるほど、一台立ち上げるごとに一定の分だけメモリを消費するということを示している。Vitalに関しては比較的大きな数値の変動があるが、気にするほどではないだろう。結局、どのシンセも、大体同じ分だけメモリ消費量が増えていることがわかる。

メモリ消費量 (増減量)

結果

結果、Vitalが7つのシンセの中では最も多くのリソースを使用するシンセであることがわかった。逆に、 Synth1 や Xhip、Massive などといった比較的古株のシンセサイザーがVitalなどのそれと比べて非常に小さなメモリ消費量で済んでいる。

これら古株のシンセはおしゃれなUI要素を含んでいないことや、シンセサイズの形式も FM や Sync といった比較的シンプルなものであるという点で共通している。一方で、 Vital や Serum などといったシンセは華やかなインターフェースを兼ね備えていたり、サイズの大きなウェーブテーブルを使用したりしている点で共通しており、これらの要素がメモリ消費の原因であると予測できる。以下に、一台分立ち上げるごとに増加するメモリの平均をそれぞれのシンセについて比べた時、多い順に並べたグラフを示す。

平均メモリ使用量のグラフ

まとめ

個人的に2021年になって、SurgeはJUCEというプラグイン開発のフレームワークを通じた開発に移行したが、パフォーマンスの大きな劣化は全く見られないことが大きく評価できる。

もし、曲を作るときにリソースの消費を心配するような状況であり、そこまで複雑な音色も求めないのであれば、これらのシンセの中でも比較的メモリ使用量の少ないものを使用すると良いだろう。

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