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ソフトウェアシンセサイザーは実際どれくらい重いのか?

はじめに

VSTi や Audio Unit のプラグインとして動作するソフトウェアシンセは、実際どれほど多くのリソースを消費するのだろうか。楽曲を作りながら何個もプラグインをロードしていくと、知らない間にDAW自体のメモリ消費がかなりの大きさになっていることに気づいたことのある読者も少なくないだろう。

筆者は曲を作ることを趣味の第一としているのにもかかわらず、曲のアイデアより先に思いついたことはまず先に実行してしまうきらいがあって、その一つが今回の実験だった。今回は、ソフトウェアシンセサイザーを中心にそれらのリソース消費量について検証していく。

環境

筆者が普段使用しているDAWは FL Studio 20.9 で、今回の実験も同様の環境で行った。

検証に使用したシンセサイザーは以下の7つで、プラグイン1つ1つの紹介は避けるが、Serum, Massive を除くものは全て無料のシンセサイザーである。また、Surgeに関してはClassic、Wavetable、FMなど複数のオシレーターのアルゴリズムが存在するが、今回の実験に際しては Modern Oscilator モードを使用した。

Surge XT の Modern Oscilator モード

評価方法

評価は以下の要領で行った。

  1. 一つのシンセを同じプロジェクト内で1台ずつ起動していき、最大5台まで起動していったときに、1台ずつ増加するであろうメモリ使用量の平均値を計算する。
  2. それぞれのシンセの種類分新規のプロジェクトを立ち上げて、同じように手順1を繰り返し、平均メモリ使用量を計算する。

結果と分析

以下に、計測した生のデータと、それから算出した差分を示す。

メモリ消費量(生データ)

以下の列における 0 がシンセを読み込んでいない状態である。1列目がまず1台目のシンセを起動した状態のメモリ消費量で、どのシンセも多かれ少なかれメモリを消費しているようだ。以下の結果をグラフ化すると、その後、台数を増やしても比較的比例してメモリ消費量が増えていっていることが明らかとなった。

メモリ消費量(生データ)

メモリ消費量 (増減量)

上のデータに基づいて、台数ごとのメモリ使用量の増減を算出した。Vitalに関しては比較的大きな数値の変動があるが、気にするほどではないだろう。

メモリ消費量 (増減量)

結果

結果、Vitalが7つのシンセの中では最も多くのリソースを使用するシンセであることがわかった。逆に、 Synth1 や Xhip、Massiveなどといった比較的古株のシンセサイザーがVitalなどのそれと比べて非常に小さなメモリ消費量で済んでいる。

これら古株のシンセはおしゃれなUI要素を含んでいないことや、シンセサイズの形式もFMやSyncといった比較的シンプルなものであるという点で共通している。一方で、VitalやSerumなどといったシンセは華やかなインターフェースを兼ね備えていたり、サイズの大きなウェーブテーブルを使用したりしている点で共通しており、これらの要素がメモリ消費の原因であると予測できる。

平均メモリ使用量のグラフ

まとめ

個人的に2021年になって、SurgeはJUCEというプラグイン開発のフレームワークを通じた開発に移行したが、パフォーマンスの大きな劣化は全く見られないことが大きく評価できる。

もし、曲を作るときにリソースの消費を心配するような状況であり、そこまで複雑な音色も求めないのであれば、これらのシンセの中でも比較的メモリ使用量の少ないものを使用すると良いだろう。

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