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グラフを理解する | ダイナミクス系のエフェクターについて #2

グラフを理解する | ダイナミクス系のエフェクターについて #2

https://yokkin.com/blog/category/tutorial-plugins/dynamics-basics

はじめに

前回の投稿では、コンプレッサーやリミッターをはじめとするダイナミクス系のエフェクターの働きや効果について学習しました。これはあくまで筆者自身の定義ですが、ダイナミクス系のエフェクターとは「入力信号の音量を何らかの基準に基づいて短い間隔で操作してくれる」ものでしたね。

しかし、それだけではダイナミクス系のエフェクターを論じるために必要な知識は足りません。なぜなら、入力に対してどのような出力がなされるのかということを考察する際にはある程度の定量的な指標を定めたうえで考察することが必要であるためです。そこで今回の記事では、一部のダイナミクス系のエフェクターにおけるグラフ表示の読み方について学習していきます。これを身につければ、グラフを見るだけでエフェクトがどんな処理をしているのか、そしてどのような音を出力するかが一目でわかるようになります。今回はこのグラフが読み取れるようになることを目標にします。

グラフを理解して読み取ってみる

早速ですが、以下の画像を見てください。これはコンプレッサーに付属するグラフをそのままスクリーンショットしたものです。

この2次元のグラフにおいて、横軸には入力レベルが、縦軸には出力レベルがとられています。グラフの正方形の対角線を結ぶ、うすい灰色の斜め45度の線は、入力と出力がちょうど1:1になる線です。画像の中央では左下から伸びてきた線がカクっと折れ曲がっています。このコンプレッサーでは、この地点を入力 0dB、出力0dB としているようです。

横軸は入力レベル、縦軸は出力レベル

以下に簡略化したグラフを載せてみたので参考にしてください。なお便宜上、これからは入力レベルや出力レベルをそれぞれ文字に置き換えてしまいます。それぞれプラグインへの入力を Vᵢₙ 、一方で出力を Vₒᵤₜ として考えるようにしてください。

次のセクションでは、具体的な例とグラフの例をそれぞれ交えながら、読者の皆さんへグラフの読み方を感覚的につかんでもらう手助けを行います。

出力レベルと入力レベルのそれぞれを軸に取ったグラフ

プラグインが何も処理していないとき

では早速ですが、プラグインが何も処理していないときは、入力と出力のレベルの関係を示すグラフはどんな形状になるのでしょうか。

答えはとても簡単です!プラグインに入った音はそのまま出力され、音質も音量も変わらないのですから、入力と出力の関係は Vᵢₙ = Vₒᵤₜ になり、また入力と出力の信号比は1:1になります。したがって、グラフの形は以下の画像のように、正方形の角を対角線で結ぶような感じになります。

※ グラフの中央にはしきい値を意味するTHRESHOLDという文字がありますが、この状況ではしきい値を利用して音に変化を加える要素もないので、とくに考えないで大丈夫です。

プラグインが何も処理していないとき

音量を調整するとき

ミキサーのフェーダーを上げ下げしたときのプリフェーダーの入力とポストフェーダーの出力の関係もこのグラフで表せます。普通の音量調整の場合は、このグラフの傾きが変化します。変数 a がフェーダーで調整する音量の値だと思ってください。

この変数 a は入力音量にかかる倍率で、0.5なら音量が半分になったことになるし、逆に2なら2倍になったことを示します。なお、dBに換算するとそれぞれ-6dB、+6dBしたことになるのですが、その換算方法については他の記事をあたってください。

音量を調整するとき

コンプレッサーでRatioを2:1に設定したとき

コンプレッサーを通った後の音量のグラフは、以下のグラフが示すように、しきい値を越えるまでレベルはそのままで、超えるとグラフの傾きが緩くなる、といったような形になります。これが意味するところは、しきい値を超えた音量が圧縮されて出力されているということです。

たとえば、コンプレッサーの Ratio を 2:1 に設定した場合、グラフ内に色付けした部分における入力レベルと出力レベルの関係は、入力レベル1に対して出力がその半分、すなわち Vₒᵤₜ = Vᵢₙ ÷ 2 になります。ただ実際は、Kneeといったパラメータも反映されるので、必ずしもここで紹介するような音量変化になるというわけではないので注意する必要があります。

コンプレッサーでレシオを 2:1 に設定したとき

おわりに

今回は、一部のダイナミクス系のエフェクターにおけるグラフ表示の読み方について学習しました。今回の例を通じて図示したように、プラグインの入力レベルと出力レベルの関係をグラフで示すと、どんな音が出力されるのかが簡単にわかります。

次回はこのグラフ表示の読み方を踏まえて、実際のエフェクターがどのようなグラフを処理するのかについて、グラフを交えながら解説します。今回の知識を踏まえた上での記事となりますので、楽しみにお待ちしていただければ幸いです。

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