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能格動詞の観点から get の用法を完璧にしよう

能格動詞の観点から get の用法を完璧にしよう

get は英語の中で非常によく使われる動詞で、それだけに大変多くの用法が存在する。たとえば goo 辞書で検索をかけるだけでも、6つ以上の用法が列挙されていることからも明らかだ。たとえば「〇〇になる」やら、使役動詞の1つとしての用法やらもある。

https://dictionary.goo.ne.jp/word/en/get/

はっきり言って、これらに列挙されている用法すべてを暗記することは、とても効率が悪い。多くの日本人は英語を母語や第二外国語として用いない以上、ある程度の妥協点にとどまり、よく使われる用法だけを覚えるのみだろう。そこで今回は、能格動詞という概念を導入する。なお、get は能格動詞に分類される動詞であり、この概念を用いつつ get の用法すべてをさらっていくことにする。

能格動詞とは

能格動詞Labile verb、または Ergative Verb、以降、本記事では後者を用いる)とは、自動詞にも他動詞にも用いられる動詞のうち、自動詞として用いた場合の主語と、他動詞として用いた場合の目的語との意味役割が同じであるようなものをいう。自動詞は目的語をとらず、他動詞はその後ろに目的語をとる動詞である。

https://en.wikipedia.org/wiki/Labile_verb

以下の2つの文を観察してみよう。open という動詞に注目してほしい。2つの文は、主語と目的語にあたる単語がそれぞれの文で全く逆転しているにもかかわらず、それぞれに共通して、「扉が開いた」という単一のできごとが叙述されている。ここで、主語と目的語の間にある動詞 open は、起こっているできごとを異なる視点から描写しているともいえる。

この文では、主語は the door で、続く動詞の open は自動詞として用いられている。もちろん、目的語は自動詞のために存在しない。誰が扉を開けたか、またひとりでに開いたのかどうかは不明、という意味合いになる。

The door opened.
「扉は開いた。」

他方、この文では、 the open は他動詞として用いられている。自動詞の文で主語の位置にあった the door という語句は目的語の位置に移動し、動作主が John であることが、はっきりと表記されている。その分、情報量としてはこちらのほうが多いということになる。

John opened the door.
「ジョンは扉を開けた。」

Ergative Verb Pair

このように、ある動詞の主語が同じ動詞の目的語として使用可能で、かつ、その文が同じ出来事を描写しているなら、その動詞は能格動詞である。そしてその動詞には、能格性(Ergativity) がある。また、このような対になっている文の組み合わせを Ergative Verb Pair とよび、本記事でもそのようによぶことにする。

Ergative Verb Pair の例

英語には莫大な数の Ergative Verb Pair があり、いくつかに分類することも可能である。例えば、以下のようなものがある。Wikipedia を参照すると概ね、4 つのカテゴリーに分類されていることが確認できる。

  • 状態変化に関わる動詞 — break, burst, form, heal, melt, tear, transform
  • 調理に関わる動詞 — bake, boil, cook, fry
  • 動作に関わる動詞 — move, shake, sweep, turn, walk
  • 乗り物に関わる動詞 — drive, fly, reverse, run, sail

そのうちの動作に関わる動詞について、もう少し例をみていこう。以下の例では、 provecheck out の Ergative Verb Pair を観察する。prove は 「証明する」という意味で、check out は 「(ホテルなどで)チェックアウトする」、「(本を図書館などから)借りる」という意味である。

この文では、うわさが証明されたという事実が2つの視点から述べられている。日本語においては、ergative pair の関係は、「した」 ― 「させた」の関係に近いことがわかるだろうか。

The rumor proved to be true.
「そのうわさ <rumor> は真実であることが証明された。」

John proved the rumor to be true.
「ジョンはそのうわさが真実であることを証明した。」

この文では、来客がチェックアウトを済ませたという情報が2つの視点から述べられている。なお、2番目の文について、句動詞の副詞は名詞の後ろに後置することも可能なので “John checked out the guest.” でも可能だ。

The guest checked out.
「来客はチェックアウトした。」

John checked the guest out.
「ジョンは来客をチェックアウトした。」

使役動詞としての get の用法と、get の挙動を結びつける

ところで、どうしてこのような理解が有益なのだろうか。一つは、get の使役動詞としての用法を考慮する際にとても便利だということにある。

「人 / モノに…させる」を表す使役動詞

このブログを読んでくださっている読者層を全員高校生と仮定するなら、私たちは高校の英語の授業で使役動詞を学習したことはたいへん記憶に新しいだろう。使役動詞は「人 or モノに … させる」または「人 or モノに …してもらう」という意味を持つ動詞のことである。

日本語における使役動詞は、動詞ではなく、使役助動詞の「せる」、「させる」によって実現されるが、英語では makehaveletget などの単語の語法の一環として表現する。これらの動詞を日本では使役動詞と呼称しているのである。

get と使役動詞は切れない関係

英語の使役動詞は、makehaveletget のそれぞれ4種類だ。そのうちの make、have、let は主語 + 動詞 だけの組み合わせでは意味が通じないものが多い。つまり3つには、疑問における応対や、ニッチな意味があるなどの場合を除いて、ほぼ他動詞の用法しかないといってもよい。

(ところで、get は 「…させる」という使役の意味合いでは、文章でというよりもむしろ口語表現で好まれる表現である点に留意しておきたい。)

使役動詞他動詞の用法自動詞の用法一例
make不可make O do / make O C
have不可have O do / have O C
let不可let O do
getget O to do / get O adv.

しかし、get は、メジャーな意味においても自動詞、他動詞の両方の用法が存在し、かつ能格動詞であるという点において、他3つとは大きく違っている。get に自動詞、他動詞の両方の用法があるという点として、例えば自動詞では、 以下のような例がある。

  • get to A ―「Aに到着する」
  • get C ―「Cの状態になる」

他動詞では、get O 「Oを手に入れる」がある。

初学者にとって大変混乱する使役の get

私たちが導入しようとしているのは、使役動詞の get を理解するための新たなアプローチである。というのも、この、get の使役動詞としての用法は、一見不可解だ。他の使役動詞は、動詞の後に目的語を置き、そのあとに原形不定詞を置くものである。しかし get は他とは違って、 to 不定詞を取る――と思いきや、なんと後ろに分詞も置けてしまうのである。初学者にとって、これは英文法を体系的にとらえることの大きな妨げに感じられる。

しかし、すでに我々は能格動詞という動詞の範疇があるという知識を得た。そして、能格動詞という点において、他動詞 get で結ばれた主語と目的語は、それぞれを入れ替えて本来の目的語主体の自動詞文にしても、同じ状況を示すという点で、使役動詞として使われている get は自動詞の文に変換可能であり、そのまた逆も同様なのである。つまり、使役動詞の get が使われた文を、そうでない形に変形しようと思えば変形できるし、そうでない形を使役動詞に変換することもかなうのである。

したがって、get を使役動詞の中の一員として考えるのではなく、能格動詞というもっと広い括りの中で get を俯瞰して、構造をつかみ、理解の一助にするということを目標としてもらいたいのである。以下の例でも使役動詞の get はいくらか紹介されているので、ぜひ続けて読んでいただきたい。

様々な get の自動詞表現を他動詞表現に変換して遊ぶ

前章で get の性質を垣間見たが、これは素晴らしい特徴ではないだろうか。この性質を利用し、初めて数多くある get の用法を総ざらいすることが可能になるのである。本章ではこの性質を用いて、様々な表現を理解していく試みを行う。初見で難しいと感じられる構文には、とりあえず「★」をつけてみた。

get + 形容詞

get + C は参考書などで「C の状態になる」、become のようなものとして学習した読者の方も多いのではないだろうか。しかし、上の文の主語を目的語の位置に置き、他動詞を使った文にすれば、簡単に違った表現にできる。すなわち、make O C 「OをCの状態にする」 という代替構文が完成するのである。

Alan got rich. ★
「アランは裕福になった。」

The investigation got Alan rich.
「投資によってアランは裕福 <rich> になった。」

get + 副詞

”Get out” 「出ていけ!」というセリフはよく耳にするが、これも簡単に変換できる。

Alan got out.
「アランは外に出た。」

They got Alan out. ★
「彼らはアランを外に出した。」

get + 前置詞句

get on = board in = ride = ride in 「乗車する」と暗記して、結局一番単語のツラが弱そうな get を使役にするにはどうすれば良いんだっけ?となることも多いだろう。しかし、前置詞をそのままに、主語を目的語の位置に持って、他動詞の文にすれば、簡単に使役構文にできる。

Alan got on the plane.
「アランは飛行機に搭乗した。」

They got Alan on the plane. ★
「彼らはアランを飛行機に搭乗させた。」

get + to 不定詞

このパターンも get to do「~する機会がある」というふうに暗記を行った方も多いだろう。上の文の主語は下の文では目的語となり、get O to do 「O に~させる」という、とても典型的な get の使役構文となっている。

Alan got to see the president.
「アランは大統領に謁見する機会を得た。」

They got Alan to see the president. ★
「彼らはアランを大統領に謁見させた。」

get + 現在分詞

get の使役構文の1つ。

The motor got rotating.
「モーターは回っている状態になった」

He got the motor rotating. ★
「彼はモーターを回転させた」

get + 過去分詞

get + 現在分詞のパターンの変種である。get の使役構文の1つ。

The nurse got fired.
「看護師は解雇された」

The manager got the nurse fired. ★
「人事は看護師を解雇した」

get + 名詞

下の文を初見で見た時は、give で良くない?と思うけれど、意味合いが違うから別の表現があるのである。こちらもぜひマスターしよう。

The kid got a doll.
「子どもは人形を手に入れた」

The mother got a kid a doll. ★
「母親は子どものために人形を買ってきてあげた」

おわりに

以上が提案になる。本記事では能格動詞という観点から get の様々な用法を観察し、分析して、意味を暗記する苦痛から逃れる方法の示唆を行った。本記事が英語を学習中の読者の方々の一助となれば、これ以上にうれしいことはないだろう。

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