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視聴用にイコライザを使わないという変なこだわりを捨てた

視聴用にイコライザを使わないという変なこだわりを捨てた

はじめに

サウンドデバイスについているスピーカーに音声信号が入力され、中についている磁石がコーン紙を震わし、それが音となり、空気中を伝わって我々が音として知覚するまでに、オリジナルの波形の周波数特性は大きく変わっていきます。実際には、鳴らすスピーカーからスピーカーのボディー、部屋の反響、リスニング位置、耳の形状などの要因によって特定の周波数帯域が増幅されたり、逆に減衰したりすることはごく普通のことです。

今回は、とりあえずスピーカーに関心を向けて、できるだけ原音に近い状態で音楽を聴けるように、実験をはさみつつ、イコライザーを使って現環境における、よりよいリスニング環境を整えてみます。

PCスピーカーの周波数特性を簡易的にみる

筆者はMS-P08UBKというエレコム製のPCスピーカーを使っています。このスピーカーはそれなりに音量が出てよいのですが、ボディーが小さいだけに実際にリスニングすると、物足りなさを感じます。実際にDAWを起動して、ホワイトノイズを生成してそれをマイクから拾ったときの周波数特性を見てみましょう。マイクはオーディオテクニカのAT2020、アナライザはFL StudioのFruity Parametric EQ 2です。マイクの周波数特性については、面倒なので考慮しません。

なお、ホワイトノイズは、全帯域でエネルギーが同じパワーになるようなノイズです。理想的には、スペクトラムアナライザでマイクから拾ったホワイトノイズの周波数特性を見たときに、以下のように低域から高域まで偏りなく同じような高さであることが望ましいです。

実際には、以下のようになりました。

ざっとならして平均-8dBくらいになります。これを基準とすると、50Hzくらいの低域はだいたい-9dB削れていて、逆に10kHzほどには+8dBほどのピークが出ています。特に、この2つの音圧差は、17dB近くあることが分かりました。また、それには至りませんが、300Hz周辺のゆるい盛り上がりや、13kHz以上の帯域の急激な減衰も気になります。目測でこの減衰は、-12dB/octくらいに見えるのですが、ここまでくるとスピーカが自然なローパスフィルタとして機能しているとも思えます。

考察

音圧レベルの定義に基づいて一番なっていない周波数帯の音圧に対して、一番うるさくなっている周波数帯の音圧レベルの差を求めると、20 * log10(17 / 1) でだいたい、24倍くらいあることになるはずです。人間の心理的な感覚量は、その刺激の強度の対数に比例するというヴェーバー・フェヒナーの法則がありますが、確かに、17dBも違うとこうも違うんだと思いました。

イコライザーをかけてみよう

さて、前段での周波数ごとの音量差については、イコライザーの力を使ってできるだけ埋めてみようと思います。イコライザーは周波数ごとの音量を調整できるエフェクターで、基本的にはDSP処理によって実現されるピーキングフィルタ、ローシェルフフィルタ、ハイシェルフフィルタなどのデジタルフィルタから構成されます。ここで、特定の周波数がうるさくなっているのならば、その周波数帯の音量をピーキングフィルタを使用してピンポイントで下げて、打ち消してあげればよいです。逆も同じように、音量が足りない帯域は持ち上げるというふうに、同じようにします。

そのイコライザーですが、今回はEqualizer APOというフリーソフトを使ってみました。導入方法については多くの例があるので省きますが、設定としてはこんな感じにしています。先ほどのスペクトラムアナライザで分析した周波数特性に相対するように全部で4つくらいのピーキングフィルタをはさんでいます。

テキストベースの設定ファイルを見る
Preamp: -3 dB
Filter: ON PK Fc 300 Hz Gain -12 dB Q 1
Filter: ON PK Fc 50 Hz Gain 15 dB Q 0.8
Filter: ON PK Fc 8000 Hz Gain -7 dB Q 3
Filter: ON PK Fc 10000 Hz Gain -9 dB Q 3

ホワイトノイズで再テスト

この設定をベースに、再度冒頭のホワイトノイズ生成→録音による測定を行ってみましょう。先ほどはPC上で純粋なホワイトノイズを生成していましたが、今回はそのホワイトノイズにイコライザーを適用しているため、この実験のエッセンスはスピーカーの周波数特性を打ち消すような音声を生成できているか?ということにあります。結果は以下のようになりました。

低域の谷と高域のピークは消えて、周波数ごとの音量差をおおむね校正することができました。

感想

間違いなく、音がバランスよく鳴るようになりました。音楽を作る人間として、ポスト処理でエフェクターをかけることは、曲のミックスやマスタリングや、そのミックスで曲をリリースしようと思った人たちの意思を否定するようでなんとなく気が引けてしまっていました。傲慢ですが、自分もイコライザーをかけて聴いてほしくないなとさえ思っていました。

しかし、以前にこの動画を視聴して、心を改めました。というか、フラットな音質という観点で考えれば、ポスト処理でなるべく原音に近い状態で聴いてあげることが、なによりも曲にたいして報いることができる手段なんだ、という視点を持たせてくれたのがこの動画であり、本記事を執筆したきっかけです。

この機会を通じて音楽を聴こうと思ったときのテンプレートを整えることができてよかったです。

なお、今回イコライザとして利用したEqualizer APOはかなりおもしろいソフトウェアだと思います。それについて特別に記事を書くかもしれないし、書かないかもしれません。とりあえずのところ、今回の記事はここまでとします。

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